「源氏物語」特別展
【ギメ東洋美術館】
2024年3月25日まで
ギメ東洋美術館では現在、平安時代や源氏物語に焦点を当てた「源氏の宮廷にて〜日本の想像力の千年〜」と題した特別点が開催されています。
「源氏物語」と言えば、日本の古典文学の代表作。ちょうど日本では、吉高由里子さん演じる大河ドラマ「光る君へ」が放送中ですね。
パリにいながら、源氏物語の世界へと誘ってくれる特別展とは、その魅力をレポートします。
OVERVIEW – 概要
11世紀、紫式部によって書かれた「源氏物語」は、過去1000年にわたって非常に豊かな図像を生み出し、現代のアーティストにも影響を与えてきました。 同展では、平安時代 (794−1185年) とその宮廷芸術を発見しながら、古代の日本に浸ることができます。
【第1部】
展示作品を通して、源氏物語の世界観へと誘います。 展示作品には、版画、着物、絵画、絵巻、マリー・アントワネットの漆箱を含む貴重な品々が。
【第 2 部】
2007年に105歳で亡くなった西陣の織匠、錦織による源氏物語の制作者である山口伊太郎氏の機織りに捧げた人生の集大成。
パリにいながら、リッチな日本文化にふれられる、貴重な機会です。
HIGHLIGHTS – 見どころ
− 伝統工芸品の美しき漆
日本の伝統工芸品として名高い漆器。実は、フランス国王ルイ16世の王妃、マリー・アントワネットは多くの日本の漆工芸の名品をコレクションしていることで有名だったんですよ。
ギメ東洋美術館が所蔵している、マリー・アントワネットのコレクションの数々が同展で観ることができます。
当時、遠く離れた国々の美を求めた「オリエンタリズム」の流行により、金を使ったより豪華で気品あふれる品々がヨーロッパの特権階級の人々の心をわしづかみにした理由が、この美しさから分かるような気がします。
− 「源氏物語」の時代を彷彿とさせるような屏風
屏風という名称は「風を屏ぐ」(かぜをふせぐ)という言葉に由来し、もともとは風よけの道具でした。そののち、部屋を飾る装飾品としての役割に重点が置かれるようになったんだそう。
照明の感じ方で見え方が変わってくる金箔。金色は古くから永遠や豊かさを象徴する縁起の良い色であり、魔除けの効果があるとされてきました。
こちらの屏風は、フランス人コレクターのもので、一般に公開されるのは今回が初めてのこと。貴重な機会です。
− 総漆塗りの駕籠
日本人にはおなじみの、徳川の紋章がある総漆塗りの駕籠(かご)が展示されています。内部の装飾も見事なもので、金箔の上に「源氏物語」の風景が描かれています。なんと、こちらの駕籠はフランスの博物館が所蔵しているもの。
同展で展示されている全ての品々、わざわざ日本から送ったのではなく、既にフランスにあるものを展示しているんです。
こんなにもレベルの高い日本の美術鑑賞がフランスで出来てしまうこと、驚きませんか?
− 「源氏物語」の漫画化
「源氏物語」は現代まで様々な形で日本文化のテーマになってきました。大和和紀さんが物語を漫画化した「あさきゆめみし」の漫画紹介など日本文化を観ることができます。
海外では、日本のアニメ・マンガをきっかけに日本語を覚える人も多いんですよ。
− 高級絹織物、西陣織
みなさん「ジャカード織」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。模様がプリントされた生地に比べて厚みがあって、立体的に見える特徴があり、織物の世界に革命をもたらした技術のことです。
日本の織物と言えば、西陣織が有名ですよね。京都がはぐくんできた高級絹織物で、多品種少量生産方式を基盤とした、先染の紋織物。
同展では、ジャカード織の技術が使われた、西陣織の見事な帯や、着物も観ることができます。
− 山口伊太郎「源氏物語 絵巻」
この展示会の目玉、2007年に105歳で亡くなった西陣織作家、山口伊太郎氏の「源氏物語」絵巻が展示されています。晩年の37年間をこの作品に費やしました。写真だと絵のように見えますが、すべて織物なんですよ。サインももちろん、織で表現しています。
この作品は山口伊太郎氏の意思により、ギメ東洋美術館に寄付されました。なぜ?
山口伊太郎氏の想い
その背景は、ジャカード織は1804年にフランスのリヨンで発明された技術でありました。
当時、日本の織物産業は窮地に追い込まれており、この技術を西陣織に取り入れたことで危機を脱したのだそうです。そこでこの技術を発明した国に是非この作品を贈りたいというのが、山口伊太郎氏の想いだったそうです。
− 香りのゾーン
最後には、お香から平安時代の雰囲気を体験できる展示があります。視覚、そして香りで私たちを源氏物語の世界に誘ってくれるこの特別展。
特別展には各国の人々が訪れており、日本人として、日本の伝統技術や色彩の感覚に興味をもってもらえることが嬉しく、誇りに思いました。パリにいながら、リッチな日本文化にふれられる貴重な機会、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
Informations
会期 | 2023年11月22日 − 2024年3月25日 |
会場 | ギメ東洋美術館 |
住所 | 6 Pl. d’Iéna, 75116 Paris |
開館時間 | 10:00-18:00 |
定休日 | 火曜日 |
料金 | 13€ |
アクセシビリティ | 身体の不自由な方もアクセスできます |
公式サイト | https://www.guimet.fr/fr |