パリ市庁舎前のキス−ドアノー

愛を祝う昨品10選

どんな愛の形に共感しますか?

」と聞いてあなたは何を思い描きますか。

古代神々の愛、恋人たちの愛、家族愛、友情、官能の愛など、時代によって変遷してきたものもあれば、ずっと変わらないものもあります。

バレンタインデーにちなんで、愛を讃える10点のアート作品を鑑賞しながら、何世紀にもわたる愛の旅に参加しましょう。

あなたはどんな愛の形に共感しますか?

目次
1.「ツタンカーメンの黄金の玉座」
2.「愛の寓意」アーニョロ・ブロンズィーノ
3.「ぶらんこ」ジャン・オノレ・フラゴナール
4.「アモールのキスで蘇るプシュケ」アントニオ・カノーヴァ
5.「眠り」ギュスターヴ・クールベ
6.「接吻」ロダン
7.「接吻」グスタフ・クリムト
8.「パリ市庁舎前のキス」ロベール・ドアノー
9.「接吻」パブロ・ピカソ
10.「Kissing Coppers」バンクシー

1.「ツタンカーメンの黄金の玉座」(紀元前1370-1352年)

王宮の中で、玉座に座ったツタンカーメンと、妻のアンケセナーメンがツタンカーメンの体に優しく香油を塗る、夫婦仲睦まじいシーンが表現されています。

2人の足元に注目してみると、1足のサンダルを、2人で片方ずつ履いているのがわかりますね。これは仲が良い事を表す描写だと言われています。

‐エジプト絵画の秘密

さらに、ツタンカーメンの右手にも注目してみてください。本来ならば右手の親指は体側にあるはずですが、見えるように反対に描写されていますね。

古代エジプトでは親指は霊魂の出入りする場所と考えられていたので、絵などを描く時には親指が見えるように描かれていたそうです。これから他のエジプト絵画を鑑賞するときに注目できそうです。

2.「愛の寓意」アーニョロ・ブロンズィーノ(1540−1545年)

この作品には、数々の寓意が織り込まれています。寓意というのは、直接的には表さず、別の物事に託して表すこと。

‐何を意味している?

絵画に注目してみると、中央には金のリンゴを持っていることからヴィーナスとキューピッドだと分かります。左側には、髪を掴み叫んでいる老婆が描かれており、これは嫉妬を意味しています。

右上の老人は、背中に砂時計を乗せていることから「時」を表し、左上の人物は、頭の中身がないことから「忘却」を表すとされています。

薔薇の花を持つ少年の影に、緑のドレスを着ている美しい少女が描かれていますね。しかしその体の部分を見てみると、彼女の左手には蠍のような刺がある尻尾を持ち、足はライオンの足をしています。

美しい愛の周りにも嫉妬や快楽など、色々な物が飛び交っているメッセージが伝わってきます。

3.「ぶらんこ」ジャン・オノレ・フラゴナール(1767年頃)

18世紀フランス、華麗なロココ美術の広がりとともに、「人間の恋愛」が描かれるようになりました。

ある男爵が、ブランコに乗る愛人を賞賛する自分の姿を茂みの中に隠して、愛人の足元を覗いてるように描いてほしいと歴史的画家に依頼したところ、その破廉恥さから断られてしまいました。

その代わりにこの絵の作者フラゴナールが紹介されたという逸話があります。

‐禁断の三角関係

絵画では、庭園に茂る木の下で若い女性がブランコに乗り、足元の男性に向かって靴を飛ばしています。

キューピッド像が内緒と言うように口に指を立てているのが見えます。右下に小さく年配の男性がブランコ​​を押しているのが見えますが、実は彼こそ若い女性の夫であるという説も。

当時ブランコは性を暗示するモチーフであり、華麗なロココ時代の禁断の三角関係をのぞいているようです。

4.「アモールのキスで蘇るプシュケ」アントニオ・カノーヴァ(1793年)

ルーブル美術館所蔵のこの傑作は、ルキウス・アプレイウスによる2世紀の小説『変容』からインスピレーションを得ています。ローマ神話の愛の神アモールと人間の女性プシュケの波瀾万丈な恋物語です。

少し物語について説明しますね。

プシュケは女神ヴィーナスをも嫉妬させるほどの美しい王女でした。ヴィーナスは、プシュケがおぞましい怪物と恋に落ちるようにと息子のアモールに依頼します。アモールは魔法の金の矢を持っており、この矢に当たった者は、直後に見たものが人であれ怪物であれ恋してしまうという恐ろしいもの。

しかしアモールは誤って、矢で自らを傷付けてしまいました。プシュケに恋をしたアモールは彼女をさらって自分の宮殿に連れていきます。「私の正体を、決して見てはいけない」と約束させ、毎晩、完全な暗闇の中で彼女と会いました。しかし、最終的にプシュケは約束を破り、アモールの正体を見てしまいます。

プシュケの裏切りに怒って飛び去ったアモールを追って、プシュケの旅が始まります。道中、プシュケは数々の難題を解決し、「永遠の美」が入ったフラスコを持って冥界から戻ってきました。しかし、彼女は好奇心に負けてフラスコを開けてしまい、そこには彼女を永遠の眠りに落とす毒が。

‐物語のクライマックス

芸術家カノーヴァはこの物語のクライマックス、眠りつづけるプシュケを発見したアモールが彼女にキスをし、蘇るプシュケの姿を作品にしています。挑戦と再燃した愛、素敵ですね。

5.「眠り」ギュスターヴ・クールベ(1866年)

19世紀フランスの写実主義画家ギュスターヴ・クールベの作品です。

ベッドに横たわる裸の女性2人を描いたこの作品は、同性愛を公然と示唆しており、初公開時には物議を醸しました。『2人の友達同士』『怠惰と欲望』という名前でも知られています。

エロティックではありますが、寝顔や絡み合う体には至福の感覚があります。 パリのプティ・パレ美術館でみることが出来ます。

6.「接吻」ロダン(1888−1898年)

守るべき道徳や規範、度を越えた時、世間からは「一線を越えている」と言われます。

ロダンの傑作「接吻」は、恋人の愛を描写した最も美しい彫刻に数えられますが、実は一線を越えた愛を表現しているのです。

ロダンは、ダンテの『神曲』の中の「地獄篇」からインスピレーションを得て、そこに登場する恋人たちをこの作品のモデルにしました。恋人たちが地獄に行った理由は、一線を越えて愛し合ってしまったから。

当時、ロダンには彫刻を制作する協力者がいました。彫刻に天性の才能を持つカミーユ・クローデル。実は、ロダンには内縁の妻がいましたが、二人は愛し合ってしまうのです。その後の2人については、また改めて。

7.「接吻」グスタフ・クリムト(1908年)

クリムト作品における共通の主題となるのは愛、親密さ、官能愛。この絵画には黄金のベールに包まれた男女が抱き合い、男性が女性の頬に口づけをしている姿が描かれています。

色彩豊かな花畑に彼らは立っていますが、不安定なバランスにより、崖の上でよろめいているようにも見えます。彼らは足場を失いつつあるのでしょうか。

‐この絵について

この男性はおそらくクリムト自身であり、女性は彼の長年のパートナー、エミーリエ・フレーゲでもあるでしょう。

彼女は立派な中産階級の家庭の出身ですが、ファッション デザインで成功したキャリアを追求するために結婚しないことを選択しました。恋人による熱烈な抱擁に対する女性の身体的反応は、抵抗を示しているようにも見えます。

この絵は、当時のウィーンの人たちの精神状態を男女の愛に置き換え視覚的に表現したものとも言われています。

8.「パリ市庁舎前のキス」ロベール・ドアノー(1950年)

ロベール・ドアノーはヒューマニストの写真家であり、日常生活の瞬間や感情を不滅のものにしようと努めていました。

1950年、アメリカの雑誌 『ライフ』から、パリのをテーマにした写真の依頼がありました。当時は、 現在よりもカップルが路上でキスをする光景はあまり一般的ではありませんでした。

そこで、ドアノーは、カップルの演技学生2人にポーズをとってもらうことを依頼。 撮影場所として選ばれたのは、Hôtel de ville(パリの市庁舎)です。

静止しているカップルと、後ろから彼らに向かって歩いてくる通行人とのコントラスト、キスの瞬間だけ時間が止まっているかのよう。

9.「接吻」パブロ・ピカソ(1969年)

愛し合うカップルを描いたピカソのこの絵画、ほぼ彼らの顔に焦点を当てて描かれています。

ピカソの絵画の特徴でもある、黒く見開いた大きな目は空虚でお互いを見つめることはなく、女性は横たわっているように見えますが、男性は縦の位置で描かれています。恋人たちの感情の複雑さを表しているのでしょうか。

長い灰色のあごひげを生やし、それとなくわかるベストを着た男性は、ピカソ自身だと言われています。

10.「Kissing Coppers」バンクシー(2004年)

バンクシーは世界的に有名なストリートアーティストですが、その名前や身元は今なお秘密にされています。

ステンシルを使用して制作されたこの絵は、2004年にブライトンのプリンスアルバートパブの壁に初めて発表されました。

英国の警察官 2 人が情熱的なキスを交わしています。ブライトンは活発なゲイコミュニティで知られており、この壁画は、性的指向に対する寛容を訴えているように見えます。


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