トゥールーズで芸術旅
アンリ・マルタンの故郷
5月17日、オリンピック聖火は、南西フランスに位置するトゥールーズに到着。
トゥールーズは「バラ色の街」とも呼ばれ、世界遺産のサンセルナン教会、ガロンヌ川など、歴史・文化・地理的要素の魅力だけでなく、航空・宇宙産業が進んでいたりと魅力溢れる街。ラグビーの盛んな都市で、ここに本拠地を置く「スタッド・トゥールーザン」は100年以上の歴史を誇るヨーロッパ屈指の強豪クラブです。
また、新印象派の画家アンリ・マルタンの故郷としても知られています。
マルタンは、明るい陽光のもと、風景や人物像を象徴主義的な雰囲気で描き、装飾画も得意で、多くのフランスの公共建築の壁画を手がけました。
この記事では、新印象派の画家アンリ・マルタンと、彼の故郷トゥールーズを巡ります。
「バラ色の街」トゥールーズ
5月17日、オリンピック聖火は、南西フランスに位置するトゥールーズに到着。
この街を訪れると目を奪われるのは、淡くて優しい色をしたレンガ造りの建物。これらの建物が夕陽に照らされて輝くことから「バラ色の街」とも呼ばれています。
本当に、マルタンが描いたこの絵画のようです。
周辺地域に建築材に適した石切り場が無く、代わりに粘土が豊富な地質だったために、レンガが用いられるようになったそうです。
トゥールーズへは、パリから高速列車TGVに乗って、4時間30分ほどです。
「最後の印象派」アンリ・マルタンとは?
絵画の世界では、印象派(モネ、ルノワール)⇒ポスト印象派(ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ)⇒新印象派(スーラ、シニャック)⇒象徴派⇒(20世紀)⇒フォーヴィズム⇒キュビズム・・・と変遷していきます。
マルタンは印象派の次の世代で、マティスやピカソの前の時代に当たります。
美術史上では、印象派の表現方法を継承しながらも、新たな表現方法の追求といったものではありませんでした。そういう意味で、「最後の印象派」とも言われています。
Henri Martin‐アンリ・マルタン(1860 – 1943)
アンリ・マルタンは、1860年の夏にトゥールーズで生まれます。
家具職人の父親のもと、彼はすぐに芸術の世界に魅了され、1877年から2年間、トゥールーズの国立高等美術学校で画家ジュール・ガリピュイに学びました。
その後、市の奨学金を得て、画家であり彫刻家である師匠のジャン=ポール・ローランスの指導のもと、パリで見習いを続けます。印象派をはじめとする19世紀の風景画家にならい、マルタンも各地を旅しながら風景を描いた画家でした。
1885年のイタリア旅行は彼の人生の転換点となります。
ルネサンス期の作品に心惹かれるが、ローラン、アマン・ジャンを知り新印象主義の技法を取り入れます。晩年に向かうにつれて、短いタッチなどの独自のスタイルを開発。
20世紀初頭、彼はパリ市役所、ソルボンヌ大学、国の施設である国務院など公共建築物12ヶ所の壁画を、生涯にわたり手がけました。
アンリ・マルタンの作品はどこで鑑賞できる?
オリンピック聖火はトゥールーズに到着後、この広場を目指します。
美しいレンガの街並みを望むことの出来るキャピトル広場は、レストランやカフェが軒を連ね、多くの人々で賑わうこの街を代表する観光スポットです。
トゥールーズの中心キャピトル広場と市庁舎
トゥールーズ市庁舎は、12世紀に建てられた荘厳な建物。
中に入ると、街の歴史における重要な物語を語る壁画の世界が広がります。トゥールーズ出身のアンリ・マルタンやポール・ジェルヴェなどの有名な画家による新印象派の絵画で飾られた内部はまるで美術館のような趣があります。
アンリ・マルタンホールでは、マルタンが描いた「春・夏・秋・冬」を表現した装飾画を鑑賞することができます。
さらに奥に進むと、市民の結婚式が行われる広間が。教会でする結婚式とは別のものであり、日本で言う、役所に婚姻届を提出する儀式と似ています。
無料でこの素敵な空間を楽しむことができますので、ぜひ。
Informations
住所 | 19 Rue Léon Gambetta, 31000 Toulouse |
営業時間 | 08:30 − 18:30、日10:00 − |
定休日 | なし ※不定休あり |
料金 | 無料 |
アクセシビリティ | 身体が不自由な方も入場可 |
パリ5区の区役所でもマルタンの壁画が鑑賞できます
ちなみにパリ5区の区役所もアンリ・マルタンが手掛けた装飾画を鑑賞することができます。
5区で結婚式を挙げられたパリ在住のみなさんは既に見ていたというわけです。
この壁画はパリ観光でも有名な、リュクサンブール公園が描かれています。
イベントが行われていない時は、誰でも中に入ることができますので、マルタンの作品を鑑賞しに訪れてみてはいかがでしょうか。無料です!
Informations
住所 | 21 Pl. du Panthéon, 75005 Paris |
営業時間 | 08:30 − 17:00 木‐19:30 |
定休日 | 日曜日 |
料金 | 無料 |
アクセシビリティ | 身体が不自由な方も入場可 |
フランスの美術館
パリ観光で人気のオルセー美術館でも、マルタンの作品が鑑賞できます。その他フランスの美術館でも鑑賞できますので、近くの美術館を訪れた際はマルタンの絵画をゆっくり楽しんでみてください。
彼の作品からは、明るい陽光のもと、軽やかなタッチと色彩の豊かさで、奥行きや広がりまでも感じられますね。
トゥールーズの街巡りを続けたい人のために
トゥールーズ市庁舎内のマルタンの装飾画と同じ景色を歩いてみませんか?
ガロンヌ川とポン・ヌフ橋
「ガロンヌ川のほとり、歩行者または夢想家」と題されたこの装飾画は、マルタンの家族と友人が描かれています。
ガロンヌ川は、ピレネー山脈からトゥルーズ、ボルドーを経由して大西洋に続く川。
「アンリ・マルタン散歩道」と呼ばれるガロンヌ川沿いの散歩道は、のんびり散歩を楽しんだり、サイクリングする人が多くいます。
また、ガロンヌ川にかかるポン・ヌフ橋は、17世紀に建設されたトゥールーズで最も古い橋。
夜はライトアップされて、夕方は夕焼けと橋を一緒に見ることができる写真スポットです。
世界遺産‐サンセルナン教会
キャピトル広場と市庁舎の近くには、トゥールーズで最も有名なロマネスク建築の傑作、サンセルナン教会があります。
その起源は 11世紀に遡り、フランスのサンティアゴ デ コンポステーラの巡礼路にあるユネスコの世界遺産の 1 つです。
スペインにあるキリスト教の聖地を目指す巡礼路です。
ところで、パリの巡礼路にある、「秘密」をご存知でしょうか?
パリの巡礼路には、芸術家サルバドール・ダリが作成した日時計が飾られています。
しかし、パリ人でさえ本物のダリの作品だとは気付かずに毎日通り過ぎてしまいます。お気づきでしたか?
【パリ五輪聖火】トゥールーズでの様子
トゥールーズでのオリンピック聖火は、「バラ色の街」を巡り最後はラグビーワールドカップ2023の開催地Stade Ernest-Wallonで聖火台に火が点けられました。
聖火ランナーの中には、ラグビー選手のロマン・ヌタマックの姿も。
彼がオリンピック聖火を高く掲げてピッチに登場すると、「トゥールーザン、トゥールーザン」と観客たちは熱狂したそう。
動画からも興奮が伝わってきますね!
この熱狂とともにオリンピック聖火は次なる街を目指します!